上田 彦次郎
Hikojiro Ueda
上田 彦次郎
うえだ・ひこじろう
上田彦次郎氏(号は春耕、1901~1985) は伊豆修善寺の出身。三島の写真館で修業した後、大正9年、19歳の時に東京に出、芝田村(現在の新橋)にあった絵葉書製造・販売の日新社に入社。全国の観光地を駆け巡って風景絵葉書の注文を取り、売りさばいた。その後、大正15年に独立して、春耕社を起こす。
独立する前の大正末期、熱海の観光業者から新趣向の絵葉書を作ってほしいと依頼を受け、当時の川柳の第一人者・井上剣花坊の川柳と谷脇素文の漫画に、上田氏の写真を組み合わせて、川柳絵葉書を製作した。熱海のものと伊豆一般の二種類を作ったが、その独特の温泉情緒が受けて、よく売れたようだ。
上田氏の製作したものは、観光絵葉書の他に、名所の写真をあしらった栞、観光パンフレット、堀内天嶺画『日蓮物語』、『修禅寺物語』、『唐人お吉一代記』の絵葉書や冊子がある。昭和50年当時も、故郷の修善寺に在って、絵葉書関係の仕事をしていた。
日本大学国際関係学部図書館で所蔵する約2000点のガラス乾板は、上田氏が昭和20年代から30年代、伊豆地域を中心に撮影した絵葉書製作用の風景写真。同氏がパイオニアとして伊豆地域の観光振興に尽くした足跡を見ることができる。
参考資料
『伊豆新聞』昭和50年10月24日(下田版)
『伊豆新聞』昭和50年10月29日(下田版)
『熱海新聞』平成19年2月10日
日本大学国際関係学部図書館