熱海市在住の彫刻家・高須英輔(ひでほ)さんの展覧会を開催します。
高須さんは、1983年より空間デザイナーとして建築関係の空間づくりに携わりながら、彫刻、彫刻的家具を発表。現在、建築意匠デザインを手掛け、レリーフ、屋外彫刻、モニュメントなどのコミッションワークを数多く制作しています。
本展テーマの蘇生組積(そせいそせき)は、高須さんが1980年代から制作しているシリーズで、木材を鉈(なた)で割り、それを積んでいくことで、1つの塊が2つになり、2が4に、4が8に、16が32にのように、無限に広がり、新たな形に展開していく事象を表現した作品です。
「本来の材が持つ歴史や物語、思いに寄り添い、自分のフィルターを通じて、今一度組みなおし、積みなおし、新たな造形にして未来に手渡す作業」と語るように、素材が持つ思いに着目し、高須さんのフィルターを通じて再構築され、アート作品として「蘇生」された作品は、後世へと受け継がれ、事象的にも心象的にも無限に展開されていきます。
「作者の秘めたる願いは、菩薩の湧出である。人々が菩薩の心を持ち、限りなく善にあふれる世界であって欲しい。1の善が2の善に、4に、8に、32に、世界が平和であって欲しいと願う」と語る高須さん。
本展は、多彩な蘇生組積シリーズの他に作品のデッサンなども展示し、高須さんの思いを感じられる展覧会となっています。
裾野市在住の藍染作家・水口よお子(みなくち)さんの個展を開催します。
水口さんは、小学校の教諭をしていた50歳の時に訪れた藍染展で天然藍染の世界に魅せられ、教室を主宰する全国阿波藍染織作家協会会員の野口日出氏に師事。
2001年の退職後、本格的に藍染を学ぶ。2003年から公募展に出品を始め、2009年に初出品、初入選した国画会主催「国展」には、連続12回入選。新人賞、国画賞を受賞。2021年準会員に推挙され、現在は、国展、全国阿波藍染織作家協会、静岡県工芸家協会や個展を中心に活動しています。
水口さんは、阿波藍「すくも」を使用した天然藍灰汁発酵建て藍染(てんねんあいあくはっこうだて)と呼ばれる化学薬品を使わず、自然界から採れる原料のみを使用した、伝統的な技法で作品を制作しています。
藍甕の管理、作品のデザイン、絞り、染めの工程を全て一人でこなす一方、畑で蓼藍(たであい)を育て、蓼藍生葉染も行います。
水口さんの作品は、日本の風土や自然をテーマとし、藍色の濃淡や滲みで美の世界を表現しています。「藍染自体が自然そのもの。染め生地を手絞りし、後は藍の力によって作品が創られる。そこには、計り知れない自然の営みがあり、それが藍の魅力」と語る水口さん。本展では、国展の受賞、入選作品や静岡県芸術祭美術展、静岡県工芸展の受賞作品の他、額縁に入れた藍染作品や蓼藍生葉染作品などを展示する他、藍染の道具なども展示し、天然藍染の魅力が伝わるような展覧会となっています。
裾野市在住の造形作家、福井揚(よう)さんの個展を開催します。
福井さんは、語学留学で渡ったアメリカで陶芸に出会い、その後、カンザスシティの美術大学で陶芸、ラスベガスの大学院では彫刻を専攻。卒業後は、ニューヨークなどで活動し、2013年、18年間滞在したアメリカから日本に帰国しました。
現在は、裾野市の十里木高原にスタジオを構え、個展を中心に活動しています。
福井さんは、パステルカラーでポップな彫刻陶芸、鮮やかな色彩のフェルト片を貼り合わせて作る立体作品など、多様な技法と素材で制作しています。
幼少期は、父の創設した障がい者施設で利用者たちと共に生活。アメリカではアジア人がいない環境での暮らしなど、少数派の中から物事を見てきた福井さん。「優しさや可愛らしさは、自分を守るための強さ」と語り、作品にもそれを投影しています。
一見すると可愛らしい作品には、視覚的な違和感を盛り込み、現代社会や文化、慣習をシニカルに表現。意味や意図をあえて捉えにくくすることで、混乱させ、作品の解釈を見る側に委ねています。
今展では、彫刻陶芸やフェルトの造形作品を展示。展覧会のタイトル含め、既成概念にとらわれず、自分なりのストーリーを作り、解釈を楽しんでもらう展覧会となっています。